人の成長、組織の成長〜組織活性・人材育成コンサルタントの連載コラム〜

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組織の活性と人材育成は、企業において永遠のテーマ。
近年では、アルバイトスタッフさん・パートスタッフさんが戦力の中心となり
その活用が店長さんや社員さんの重要課題となっている場合も多いのではないでしょうか。

本コラムは、人材育成や組織制度設計に数多く携わっている
組織活性・人材育成コンサルタントが、
マネジメントに苦労する皆さんへ贈る日々の小さなヒント集です。

「こんな場合はどうしたらいい?」「こんなケースでこんな対応をしたが、良かったのかな」
「もっとこんなことについて知りたい!」などご要望やご感想がございましたら、
お気軽にinfo@adva.co.jpまでお寄せください。    ⇒語り手のプロフィールはこちら

大変革・大変化の時代…『自走進化型人材』|columNo.15

さて、いよいよ人材育成のコツについて、最後の項となりました。
最後に、もう2つだけご案内させて頂き、この項の締めくくりとさせて頂きます。


1.) 成長する主役は本人

これまでを振り返えると、『どう育ていゆくか?』と、なんだか“主役”が、企業や上司…
『育成する本人の周り』にあるように受け取られるそうですが、最後に改めて
『主役は、あくまでも本人』である…ということを押さえておきたいと思います。

弊社の自論でもありますが、『成長の“機会”や“環境”は提供できるが、
“成長”自体を提供することはできない』
という真理を忘れて人材育成にあたると、
これまでご案内したことは本末転倒になります。

私も経験がありますが、たくさんの応募者と面接をしていると、たまに、
『御社なら、より成長させてもらえる…と思い応募しました!!』と
元気に言い放つ応募者が現れます。

そんな時、私は面接にもかかわらず、その方に、こう話をしています。

「環境も用意してあります。機会も提供しましょう。
いろいろなことを教えていきたいとも思っているし、心から成長を願っています。

けれど、最後の最後は、『成長させてもらうのでなく、自ら成長しようとする』人が、
より成長するものです。

自ら学び取り、自ら自分のものとし、自ら熟成させアウトプットできるようになるかは、
最後の最後は自分次第なんです。
これはとても奥が深いことですから、就職にあたって“成長させてもらえる”という
会社選びや仕事感…それ自体をもう少し深く考えてみると良いです」と。

あくまでも主役は自分であること…。
本人が、ここを腹に落としていることがとても大切なのです。


2.) 時代が求める…『自走進化型人材』へのステップ

そして、同じ“環境”、同じ“機会”の中で、より高みへと成長する+αの力が、『自走力』です。
『自ら成長を加速させる力』と言っても良いでしょう。


私はこれを『自走進化型人材』とか『自走進化型組織』…という表現で発信していますが、
最後の最後に、時代の変化の中で、この『自走進化型』がキーワードになってきている
ことについてご案内しておきます。

振り返ってみると、1980年代までの高度成長時代は、育成の“主役”は
企業や上司側でも、ある程度は上手くいく場面も多かったと思います。
市場が求める価値提供の構造もシンプルでした。
新人は、とにかく組織の一員として『定型業務』を覚えこなせれば
ある程度の価値提供に繋がり、一人前として認められていきました。


しかし、時代の変化と共に、経済環境はより厳しくなり、競合環境も激しくなり、
『定型業務』だけで提供できる“価値”は、どんどん“目減り”し、少なくなってきました
仕事内容も、ノウハウも、業界によっては商品構成さえも…
より高度に、より複雑化しているのではないでしょうか。


こういう時代には、変化に対応すべく、自ら考え、自ら新しいやり方や創意工夫を
生み出す力』
が、一人前の証に代わってきます。

これまで自社が『お客様に選ばれていた理由』は、どんどん当たり前のものとなり、
競合他社は次々とより良いもの、より魅力的なものを生み出してきています。

目の前のお客様が“満足する価値提供のレベル”は、少しづつ高くなり、
同じ“価値提供”を繰り返していると、やがてお客様から“卒業”されてしまう時代…。

市場の要望が高度化し、多様化し、複雑化しているのですから、
「これまでのやり方≒定型」だけでなく、「変化に対応するやり方≒非定型」までを
こなせることが一人前…
という時代になってきているのです。


時代の変化は、『自ら考え、自ら新しいやり方や創意工夫を生み出せる』ことこそが、
今の時代の成長の証ですよ…というメッセージを発信しています。

そこで注目されるのが、『自走進化型人材』です。

ただし、一足飛びにそういった人材になっていくことは稀。そこへのステップとして、
先日、ある社長さまとお話させていただく中で、こんな会話がありました。


『成長段階の一番最初は、
 まず“レールが引いてあったら走れる人材”かな』

「なるほど。その前には、レールが引いてあっても、
 まだ走れない人材
がいるわけですね」

『引いてあるレールを壊して回ったり、走れないならまだレールの上に
いるから良いけど、なんだか脱線しまくっちゃっている人材もいるよね』

「そういう人材を、いかに育ててゆくのかが苦心のしどころですね」

『次に、レールが引いてなくても、自分でレールを引いてくれる人材

「その前に、引いてあるレールを改良したり、延ばしたり、
 広げたりする人材
は如何でしょう?」

『なるほど。1があれば、それを〇倍化できる人材だね』

「1を〇倍化できる先に、0から1を創りだせる人材がいる…と」

『0から1を創れる人材が増えると、本当に組織が発展し始めるね。
自走進化”というか…』

「社長様や部門長が、一生懸命努力して
 “操縦進化”させている状態から変わりますね!!」

     … … …     … … …     … … …

「そして、その“0から1を創れる人材”に、
 この“1を〇倍化してくれる人材”が組み合わさると、
 本当に組織は強くなりますね」

『0から1を創れる人材。1を○倍化できる人材。
 レールが引いてあったら走れる人材か…』

そのフォーメーションが、組織を強くする…」

『そのフォーメーションが、業績をあげ、儲かる組織になるわけだな。
 結局、“人材育成”それ自体が進んでも、
 自社や組織の進化、発展に繋げないと意味がない
からね。』

「そこが、組織の上に立つ人の腕の見せ所だし、
最も面白いところだったりしますよね。」
 


組織を束ね、人を育てる立場の方にとって、最もご苦心されるところが、
最も腕の見せ所であり、そして最もやりがいがあり、面白いところだったりします。

人材を育成する…ということの本当の醍醐味と素晴らしさを、
わくわくしながら、楽しみながら享受していただく…
そこに、このコラムが少しでもお役に立てば幸いです。 2011.01.25

『誰が育てる? どう育てる?』<5> |columNo.14

さて、人材育成5つの基本機能、残るは「ティーチング機能」と「コーチング機能」です。

このふたつは、人材の育成段階や場面によって「活用のウエイトを変えていく」ことが
有効な育成につながります。

私は、これを育成段階に合わせ『かかわり方のギアチェンジ』をしましょう…と
ご案内していますが、この時に登場する『4つのギア』も含め、
ティーチング機能とコーチング機能は、一緒にご案内いたしましょう。

 

4.) ティーチング機能 と コーチング機能


「ティチング機能」は文字通り『Teach=教える』機能です。
育成するメンバーに「答えを教え」、「具体的なやり方を指示・命令」しながら
育成を進める機能です。

新人社員は当初、仕事に必要な知識も少なく、その具体的なやり方も、
進め方の手順も解らないことがほとんどです。

この時のかかわり方は、具体的な仕事の仕方を『指示』したり、その時に必要な知識を『教え』たりする…いわゆる「ティーチング機能」でかかわることが自ずと多くなるでしょう。


一方「コーチング機能」は、直接答えを教えたり具体的に指示するのでなく、『質問や傾聴や賛同・支持』等を通して、メンバーが自ら更に良いやり方や答えを導き出せるよう『支援・援助』する機能です。

ある程度スキルや知識を身につけたメンバーの中に既にある、
「答え」や「より良い仕事のやり方や手順」を『引き出す』かかわり方
と言っても良いでしょう。

「ティーチング機能」と「コーチング機能」は、メンバーの成長段階によって、
それぞれ有効な場面が異なります。


まだ何も解らない新人に、「どうしたら良いと思う?」とか「どうしたいですか?」という
かかわり方をしても、知識も基本も身につけていないのですから、なかなか上手くいきません。

逆に、知識やスキルの習得が進む中、いつまでも答えや具体的指示を与える「ティーチング機能」でかかわり続けていては、“依存”の状態が恒常化してしまい、「自分で考え」「自ら答えを導き出せる」ような自立・自走した人材にはなりにくくなってしまいます。

また、ある程度自信がつき、任せて欲しい、自分で決めたやり方でやってみたい…と感じ始めているのに、あれこれと細かく口出しされるのも、成長にとってブレーキになることが多いもの。

以前ご紹介した「モチベーション」の視点からも、自立・自走を始めた段階では、「メンバーの想いや立場を尊重」しながら、「自分で決めさせる」方が、“高い動機”や“当事者感・主役感”の中で仕事を進めてくれるのです。

このように「ティーチング機能」と「コーチング機能」は、どちらがより有効ということでなく、育成段階に応じて「活用のウエイト」を変えていくことが、よりよい人材育成につながります。

私は、これを『かかわり方には4つのギアがありまして…』と、
4つの視点での『かかわり方のギアチェンジ』をすることをお勧めしています。


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1速
「指示や教える」ことが多く、「援助や支援」が少ない育成初期段階

2速
「指示や教える」ことも相変わらず多いが、「援助や支援」的なかかわりも多くなる段階

3速
「指示や教える」ことが少なくなり、「援助や支援」的なかかわりが多いままの段階

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「指示や教える」ことも、「援助や支援」的なかかわりも少なくなる自立・自走の段階


これら4つの段階があり、メンバーの成長段階に合わせて
『かかわり方のギアチェンジ』をしてゆくことを簡単に整理したものです。

これは、ちょうど自動車の運転で、1速でスピードが乗ってきたら2速へ。
そして、2速で更にスピードが乗ってきたら3速へギアを変える…そのほうが
スムーズに自動車が走る…という状況と似ています。

1速でいきなり100Km以上で走ろうとしても、なかなか上手くいきません。
1速には1速の適正な加速と速度。2速には2速の適正な加速と速度があるのです。

育成もこれと同じで、まず基本を教える、指示するという「ティーチング機能」主体で
かかわりながら育成し、基本を習得し成長してある段階になったら、
『かかわり方のギアチェンジ』です。

次は、「ティーチング機能」も「コーチング機能」もどちらも多く混在するかかわり方へ変え、
そして「ティーチング機能」、次に「コーチング機能」と、自立・自走人材に近づくにつれて
順に減らしてゆくわけです。


育成担当者として、一生懸命育成していって、『ある程度は成長してくれたのだが、
どうも伸び悩み始めた』という段階が現れている…そんな時は、
『かかわり方のギアチェンジ』をしないまま育成を進め、1速のままで高速道路を
走っているような状況になっていないか…一度チェックしてみては如何でしょうか。2011.01.12

『誰が育てる?どう育てる?』<4> |columNo.13

続いて、「ロールモデル機能」です。

3.) ロールモデル機能

前述した育成担当者のレクチャーで、ロールモデルのセッションの時、
私は、こんな話をすることがあります。

『育成するメンバーは、皆さんの“言う通り”には、なかなか、なりませんが、
皆さんが “しているとおり” には、間違いなく、なっていくものです!!』


このとき、毎回、多くの参加者たちの顔が“みるみる引き締まっていく”のを、肌で感じます。

自分自身が、「模範」となり、「見本」を示し、「お手本」でなければならない…
更には、新人の目標になることまで求められるのですから、
“武者震い”する参加者が出るのも頷けます。


前回、前々回の「モチベーター機能」や「コーディネーター機能」も、
とても大切な機能ですが、実際の仕事の手順や、具体的な仕事の細かいやり方、
そして仕事に向かう姿勢や情熱などは、育成担当者自身が日常の中で
『お手本』『見本』を示さなければ、なかなか伝えられません。

『やってみせ、言ってきかせて、させてみて、褒めてやらねば、人は動かじ』という、
山本五十六さんの有名な言葉にもあるように、
まず最初は『やってみせ…』が不可欠というわけです。

このように、ロールモデル機能とは、育成メンバーの「模範」となる機能であり、
具体的な「見本」「お手本」を示す機能のことです。

この機能は、更に発揮されていくと、“○○さんのようになりたい”という
「憧れの存在」になっていったり、“1年後に○○さんのように力をつけるぞ!”という
「目標となる存在」にまで拡大していきます。

高いレベルで活き活きと働く先輩を見て、そこに数年後の自分の「理想の姿」
見出した経験は、多くの方がお持ちなのではないでしょうか?

『なるほど、そういうふうにやるんだ』に始まり、『○○さんは素敵だな』、
『○○さんのようになりたい』という存在が常に身近にいて、
その人物が企業や組織にとっても「模範」、「見本」、「お手本」的な動きをしていたなら…。
それは相乗作用となり、他のさまざまな人材育成の動きを、何倍もの効果にしてくれます。

更に、ロールモデル機能で注目しておきたいのは、入社まもない新人や育成メンバー達の、
『“満足バー”や“スタンダードレベル”の基準値』を押し上げ、そこへの『可能感』を高める
という嬉しい副作用があり、それは組織として連鎖するということです。

「難しそう」「とてもできない」「無理だ」…という心理的な壁は、
すぐ横で年次の近い先輩がなんなくスラスラとこなす日々の姿に
触れ続けることによって、見事なまでに消えていきます。


「難しそう」は、“なんだか簡単そうにやっている姿”を見せられ
「自分にもできそうだ」に変わり、

「とてもできない」は、“楽しそうに活き活きとやっている姿”を見せられ
「あそこまでできるんだ」「挑戦してみたいな」「あそこまでやりたい」
「あそこまでやろう」に変わっていく…。

先週、男子、女子共に、またまた感動を与えてくれたフィギュアスケート界…
2時間20分の壁をも破り、当時、日本人として初めて世界記録更新もした女子マラソン界…
オリンピック2大会連続で金メダルを獲得した男子平泳ぎを中心とする競泳界…
高校野球で、いつも甲子園に出場するあの高校…

スタンダードレベルの高いチームや組織には、
必ず高いレベルでのロールモデルの連鎖が存在しています。
そして、この連鎖は、ロールモデルとなる人材のレベルが高ければ高いほど、
より高いスタンダードレベルの組織を創りだし、
また更に高いロールモデルを生み出していきます。

まさに、
『さまざまなロールモデルたちが存在し、あちこちで機能を充分に発揮している組織は、
それだけで“成長・進化・発展へのDNA”を、一部手に入れているようなもの』
だとも言えるでしょう。

みなさんの組織では、ロールモデル機能…しっかり発揮され、連鎖していますか? 2010.12.22

『誰が育てる?どう育てる?』<3> |columNo.12

次に、「コーディネーター機能」です。

2.) コーディネーター機能

コーディネーターと聞いて思い浮かべるのは、ツアーコーディネーター、ファッションコーディネーター、インテリアコーディネーター、フードコーディネーター、カラーコーディネーター…等でしょうか。


例えば、一人っきりで、まったく知らない地域に、初めて行く海外旅行。
なんだか不安で、どこで何をどうしたら…と、心細くなってしまいそうです。
でも、そこに「ツアーコーディネーター」さんがついていれば、どうでしょう。
なんだか急に、とても頼もしく、楽しく充実した素敵な旅行になるイメージが湧いてきます。

「ファッションコーディネーター」さんも一緒ですし、「インテリアコーディネーター」さん、
「フードコーディネーター」さんも同様です。

それぞれの分野での知識と経験に裏付けられた動きで、いろいろ先回りして準備し
調整しておいてくれることで、それぞれ最も理想的なものに近づいていきます。

コーディネートという言葉を辞書で引くと、
「調和するように組み合わせたり、調整したりし、全体を整えること」、
「運営、進行がスムーズにいくように調整し、整えること」と出ています。
この機能は、育成場面でも、とても大切な機能なのです。

またまた私のリクルート時代の話で恐縮ですが、「コーディネーター機能」と聞いて
思い出す、いまだに感謝している新人時代の経験があります。

入社して数ヶ月経った頃、当時の上司から「お客様向けのコミュニケーションブックの
プロジェクトがあるんだけど、藤井やってみない?」と声を掛けられました。
今度新しく、お客様向けのサービス向上ツールとして、1万部以上の冊子を
配布することになった。その編集委員にならないかというのです。

当時6つあった営業部から各2〜3名づつの選出。
もちろん、主業務である企画営業の仕事も全うした上での業務。
どうやら入社1年未満の選出は私だけです。

後で知ったのですが、当時の上司は、入社数ヶ月でそこそこ仕事を覚え、
卒なく仕事をこなすようになっていく私に、ちょっと早いけれど、更なる仕事の奥深さを
体験させたい…という狙いがあったようです。それに、藤井はテーマに沿って文章を書くの
好きでしょ…と、完全に特性を見抜いた上での選出。

お陰さまで、私は、それまで一緒に仕事をする機会のなかった、各営業部選りすぐりの
沢山の先輩社員の中で揉まれるという経験もでき、媒体の企画営業をするだけでなく
人事制度や組織活性について情報を発信する機会も頂き、
早いタイミングで仕事の時間的、空間的な感覚を広げられることになりました。

例えば、こういった上司の動きは、育成の側面から見ると、
まさしくコーディネーター機能のひとつです。

この段階は習得したから、そろそろ次のテーマ…とか、
○○が得意だから、この役割で…とか、
相互の化学反応を狙って、あの部署の彼と一緒に仕事をさせたら…とか、
人材育成を進める立場として、成長段階に合わせたり、
得意・不得意や傾向・タイプを見抜いて、与える「課題」や「業務」や「役割」や
「組み合わせ」や「タイミング」を『コーディネート』する。

組織には、いろいろな特性、タイプの人材がいます。

なんでも単独でやろうとするタイプととにかく周りを頼ってしまうタイプ

考え考え準備してからやっと動くタイプと、まず走りだし、転んでから考えるタイプ

目的と意義を納得しないと動かないタイプと、目的も背景も考えず、すぐ走り出すタイプ

目標があると燃えるタイプと、目標にプレッシャーを感じるタイプ

仕事を覚えるのが早いが、仕事をなめてしまうタイプと、仕事を重く捉え慎重なタイプ

あえて極端に並べてみましたが、人材の特性やタイプによって、
与える「課題」や「業務」や「役割」や「組み合わせ」や「タイミング」を調整していくわけです。


例えば…
「何でも単独でやろうとするタイプ」には、あえて「チームでする業務」をコーディネート。
「周りを頼りがちなタイプ」には、「独りで完結させる性質の課題」をコーディネート。
「考え考えのタイプ」には、「とにかく動くことが優先される役割」をコーディネート。
「まず走り出すタイプ」には、「計画だてて進めることが必要な業務」をコーディネート。
…といった具合です。

昔、ファッションコーディネーターの友人と飲み交わした時、こんな話をしてくれました。

『コーディネートって突き詰めていくと、お客様が一番光輝くように、
足りないものを足して、いらないものは削る
ってこと。』

『そのために、「お客様をとことん理解する力」と、
「必要なものと不必要なもの、多すぎる少なすぎるの違いが解る力」、
「それをお客様が心地よく、満足するよう先回りして準備し、気持ちよく整えられる力」 …
 この「三つの力」が大切』だと…。


この話で、『「お客様」を、「自社の人材」や「自分の部下」に置き換え』てみる時、
それは、育成のコーディネーター機能についても、沢山の示唆に溢れていることに気づきます。

みなさんの組織では、育成をコーディネートする人…どのくらいいらっしゃいますか?2010.12.08

『誰が育てる?どう育てる?』<2> |columNo.11

前回、育成担当者には事前レクチャーが必要とのご紹介で、「5つの基本育成機能」となる「モチベーター」「コーディネーター」「ロールモデル」「ティーチング」「コーチング」に触れさせて戴きました。

これらについては、とても奥深いものがありますので、これから数回に分け、
ちょっとだけ掘り下げて、それぞれご案内を加えておきます。


1.)モチベーター機能

モチベーション…という言葉から思い出すのは、リクルート時代、私が初めて部下をもった時の上司の言葉です。『今までは「自らハートを燃やしている」だけで良かったが、これからは「周りのハートに火をつける」機能も、更に積極的に活用して欲しい』…と。

その上司は、熱い口調で、遠い目をしながら更に続けてこんな話をしてくれました。
『ビジネスマンには3種類の人たちがいる。「周りから火をつけられたら燃える人」、「自らハートを燃やしている人」、「自らハートを燃やし周りのハートにも火をつけてまわる人」。』

『「周りから火をつけられたら燃える人」も、「周りのハートに火をつけてまわる人」と一緒なら、「自らハートを燃やす人」になれる。だから組織は1+1>2という構造になるんだ。』

当時やんちゃで天邪鬼だった私は、「火をつけられてもすぐ消える人」「つけてもつけても火がつかない人」「燃えている火を消して回る人」もいますよね…と言い返して、ひどく怒られてしまいましたが、モチベーター機能は正しく『周りのハートに火をつけてまわる』機能です。


『人は動機によって、自ら行動を起こす』と言いますが、それが外発的なものであれ、内発的なものや自律性に基づくものであれ、高い動機付けのもと自ら本気で全身全霊を込めた行動の方が、より高い成果につながり易くなります。

そうして、さまざまな『ハートに火がつく』場面を見ていくと、大きく分けて3つの外せないポイントにいきあたります。ずいぶん昔にヒットした流行歌の節に乗せると覚え易いのですが、すなわち『現在』『人』『未来』〜♪…というポイントです。


『現在』は、「人は今・現在、夢中になり充実していることならがんばれる」という側面からのアプローチです。このためには、「貢献感・必要感」「成長実感・創造性発揮感」「当事者感・主役感」と言われる感覚を大切にする「かかわり方」が、良い結果に繋がります。

・「貢献感・必要感」…
  自分は、この会社でしっかり役割を持ち、それを果たしている…
  貢献している…必要な存在だ…と感じさせる「かかわり方」。

・「成長実感・創造性発揮感」…
  ひとつひとつ知識やスキルを身につけ着実に成長している若しくは、
  自分ならではの創造性が発揮されている、と感じさせる「かかわり方」。

・「当事者感・主役感」…
  そして、時には自分で決めさせ当事者としてやりきらせたり、何かの中心的役割を
  与えてやりきらせる「かかわり方」。

『人』は、「何をやるのかよりも、誰とやるかの方が動機が継続しやすい」という側面や、「人は誰々とこう一緒にやっているならがんばれる」という側面からのアプローチです。「この人と一緒なら…」とか「この人のためなら…」という感覚と、組織として「この人たちとなら…」「このチームのために…」という感覚。 このためには、日々の「コミュニケーション」、組織としての一体感や結束感を高める「チームワーク」、そして、“育成担当者”自身の「リーダーシップ」…が、ポイントになってきます。


『未来』は、「人はわくわくする未来に繋がるならがんばれる」という側面からのアプローチです。
このためには、「結果期待感」「手段保有感」「行動可能感」と言われる感覚を大切にする「かかわり方」が、良い結果に繋がります。

●「結果期待感」…
   なるほどそれなら達成できそうだ…と感じさせる「かかわり方」。

●「手段保有感」…
   なるほどこれこれこうしてやればできるな…と感じさせる「かかわり方」。

●「行動可能感」…
   なるほどそういう行動ならできるぞ…と感じさせる「かかわり方」。

そして、これらの「かかわり方」は、実際の場面では、ひとり一人の育成段階に合わせた、様々な機会での「理解する」「共感する」「認める」「伝える」「教える」「指示する」「要望する」「確認する」「約束する」「見守る」「褒める」「叱る」「気づかせる」「すり合わせる」「共感を得る」「任せる」「自分で決めさせる」…等のやり取りや、これらの組み合わせとなるはずです。

“がんばれば未来は明るい”が当然で、あたりまえだった時代から、がんばっても、未来がなかなか見えにくい時代へ…という時代背景の変遷の中、モチベーター機能は、人材育成にとっても、急速に重要な機能になってきました。

みなさんの組織では、周りのハートに火をつける人…どのくらいいらっしゃいますか?2010.11.25

『誰が育てる?どう育てる?』<1> |columNo.10

これまでのコラムでは『健全な仕事感の共有』を間に挟みながら、『育成方針の明確化』『OJTとOff-JT』『G-PDCA』、そして、それらをしっかり連動させることが大切…とご紹介させていただきましたが、これらを進めようとする時、最後に行き当たるのが、では『誰がそれを推進するのか』です。

人が成長する場面には、『勝手に育つ』『自分で育つ』という一面も確かにあります。しかし、どんなに一流のプロ選手やオリンピック選手にも、必ずコーチや指導者がいます。『人は人によって成長する』と言いますが、人材の適確な成長には、プログラムや環境だけではなく、『人と人との適正なかかわり』が欠かせない要素なのです。

この時お勧めしているのが“育成担当者”“育成責任者”そして“人事(若しくは経営層)”と、二層・三層構造でかかわっていく、『育成階層の複線化』です。

 

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ひとりの人材に対し、

(1)メンターにもなりつつ、日々直接指導育成をする“先輩社員”

(2)その“先輩社員”から日々報連相を受け、助言や支援をしながら、
  ひとつ上位の目線で“育成責任者”としてかかわる直属の“上司”

(3)そして、その進捗を更にもうひとつ上の目線で全体管理をする“人事(若しくは経営層)”

と、複数のラインで関わろうというわけです。(多くの場合、“人事(若しくは経営層)”は、
育成プログラムや運営の設計者でもあります)

ここで、(1)の直接指導育成をする階層で、近年、特に新入社員育成で
多くの企業さまに導入されている変化があります。

新入社員が配属されると、その組織の組織長が新人育成も担っていた時代は、今や昔。
新入社員となる若年層の価値観が大きく変化…という時代の波に合わせ、一人ひとりの新人に入社2〜3年目の比較的社歴や年齢の近い先輩社員を“育成担当者”とする制度が広く浸透してきています。


『育成担当制度』、『メンティ・メンター制度』、『ブラザー・シスター制度』、『サポーター制度』、『チューター制度』等、企業さまによって様々な名称が付けられていますが、多くは今の時代の若年層をしっかりと育成する機能を果たしています。社歴や年齢が近いと、価値観も近いものがあります。そのため今の時代の若年層の育成に最も必要な「関係性の土台」も築きやすく、身近で、なんでも相談できる利点を活かした制度が多く見られます。


こういった制度で特に大切なこととして、以下のふたつがあげられます。

【1】“育成担当者”となる先輩社員には事前に、指導育成者としてのレクチャーをしておくこと

【2】日々の報連相、定期的な育成担当者同士のミーティング等、
   ひとつ上の階層の“育成責任者”となる上司や“人事(若しくは経営層)”との
   連携・サポート体制を固めること


【1】の事前にレクチャーすることでは、例えば…

・『大切にする考え方』、『具体的なプログラム』や『育成項目』のすり合わせ・指導、
 メンターとなるための「関係性の土台」創りの大切さなどを伝える

・指導者・育成者としての基本の知識やスキル、スタンス、スピリッツ

・モチベーター、コーディネーター、ロールモデル、ティーチング、コーチング…育成基本機能

・ケーススタディとロールプレイング

・困ったときには…

等。企業さまによっては、まる一日かけて行うところもあるくらいの内容です。

【2】の連携・サポート体制については、

・上司は“育成責任者”として、“育成担当者”からの報連相を日々しっかり受けながら、
 適切な助言、時には直接的な援助も行っていく

・“育成担当者”たちと“育成責任者”としての上司、そして“人事(若しくは経営層)”
 という人材育成に関わる全階層の人たちを交えたミーティングを定期的に行い、
 育成担当を支援する

等、それぞれの階層が、重要な役割を果たしていくことになります。


これらを通じて“育成担当者”となった先輩社員たちも見違えるように成長していくことが多いのも、この制度の嬉しい副産物。

『育成階層の複線化』は、新入社員だけでなく先輩社員や上司までをも
一緒に成長させてしまう、一石二鳥、一石三鳥の利点も持っているのです。  2010.11.11

『G-PDCA』<2> |columNo.09

『OJT』と『Off-JT』を効果的に推進するために、『具体的にどうやって「G-PDCA」を回していけば良いのか?』…というご質問も多くいただきます。

「目標が、目標の体をなしていない気がする」
「目標は掲げるが、計画を立てない」
「目標を掲げ、計画を立てるが、やりっぱなし」
「しっかりした振り返りがないので成長がない」

こういったお悩みは、多くの企業さまがお持ちのようです。

ここで、これらのお悩みを解決する、弊社でも導入しているシートとその運用を、
ちょっと簡略化してご紹介いたします。

 

G-PDCAシートicon.jpg
 G-PDCAシート

 ※クリックすると
  別ウィンドウで
  開きます









左側が「過去半期」に対しての振り返りや内省、教訓、成長点の記入欄。
右側が「これからの半期」に対しての目標設定や行動計画の記入欄になっています。

これを実際には、前回記入したシートと次のシート、2枚を連動させ運用していきます。こういったシートを取り入れることにより、「G-PDCAをしっかり回しきる仕組み」は、意外に容易に創られていきます。


シートをご紹介したところで、次は、冒頭でご紹介しました、企業様からよく頂くお悩みについて、少し説明を加えていきます。

まず『目標が目標の体をなしていない』というお悩みについてですが…

 ・測定できること
 ・時限設定があること
 ・当事者にとって自発的、若しくは同意・共感・納得のあること
 ・企業や組織の中で、当事者のポジションや役割に即したものであること
 ・そして、あまり容易すぎない、成長感のあるもの
   (できれば、わくわくする、挑戦しがいのあるもの)


「目標」とは、上記の5つを最低限満たしたものである…ということを、こういったシートにも記載して、まず社内風土として徹底的に浸透させることをお勧めしています。

「夢をより具体的にし、そこに日付を入れると目標になる」…と言いますが、測定もできず、時限設定もない…まして当事者として納得感もなく、自発的でもないものは、単なる夢や憧れや、押し付けになってしまい、G-PDCAサイクルを回せなくなってしまいます。
そういう意味では、大変化の時代の中で、企業としてますます重要になってきた『目標を設定する力』を高めていけることも、このG-PDCAを推進する嬉しい副産物です。


次に、『目標を立てるが計画を立てない』について。

上記のようなシートで、目標と計画を一緒に推進してしまうことをお勧めしています。
目標と具体的計画とを一緒にすることで、目標自体が低すぎる、高すぎる…という側面もチェックできますし、「目標設定と実行計画はセットである」という企業風土も醸成されます。


続いて、『計画を立てるがやりっぱなし』について。

『定期的な進捗面談』など、『時折立ち止まって俯瞰する仕組み』、『実行管理をするしくみ』をG-PDCAの弾み車として定例化、定期化することをお勧めしています(このシートでは、最低3回のオフィシャル面談欄となっています)。
特に、成長過程の若年層ほど、せっかく目標を設定し計画を立てても、日々の業務に一生懸命になればなるほど目標や計画から離れ、日常業務やプロセスにまみれてしまう…という面が、どうしてもあるようです。これを、仕組みとして「我に返らせ」、定期的に「G-PDCAサイクルへ立ち戻らせる」のです。


多くの企業さまは、人事制度上の評価や査定などで、半年とか、最低でも1年に1度位は面談の機会があることでしょう。しかし、年に1回や2回では少ないようです。

『人材育成のためには、「結果管理」だけでなく「プロセス管理」を』というように、評価の時だけでなく、こういったシートを間においたプロセス管理の機会を、せめて半年に2回〜3回、年に4回〜6回ほど定例化してみてはいかがでしょうか。「しっかりした振り返りがないので成長がない」というお悩みも、この定例化により解決へ近づいていきます。
ここで大切なことは、過去の失敗や成功から『学び』や『教訓』や『マイセオリー』をしっかり整理し、次の目標や計画に活かすことです


こうして見ていきますと、たった一枚のシートですが、『目標を設定する力』、『実行計画を立てる力』、そして『実行管理をしながら実行しきる力』『その過程から「学び」や「教訓」や「マイセオリー」を得て、次に活かす力』…人材の成長へ、さまざまな力を高めてくれます。

「OJT」と「G-PDCA」…。
皆さんの組織では、しっかり連動させていますか?  2010.10.12

『G-PDCA』<1> |columNo.08

さて、『OJT』と『Off-JT』、これからご案内する『G-PDCA』を活用する上で、
非常に大切なところ…ということで、ちょっと寄り道をしました。
今回から、また本題に戻っていきます。

前々回迄ご紹介してきた『OJT』と『Off-JT』を連動させ、
計画的、継続的に『育成プログラム』として進めてゆく時、もう一方で、
それらをより効果的にするノウハウが『G-PDCA』です。

『G-PDCA』は、『Plan(計画)』→『Do(実行)』→『Check(評価)』→
『Action(改善)』
の業務推進や成長促進の一連のサイクルの最初に、
『Goal(目標)』を加えたものです。

仕事をより効果的に進めるノウハウ、人材を効果的に育成する
ノウハウの中で、最も基本となるサイクルとして、いろいろな場面で活用されています。

この『G-PDCA』と、『OJT』、『Off-JT』の関係は以下のようになっています。

PDCA-pic.jpg


ここでお気づきかと存じますが、『G-PDCA』と『OJT』には密接な関係があります。

『OJT』を効果的に推進するためには、『G-PDCA』サイクルを回していくことが、
とても有効なのです。このサイクルの中で、メンバーたちは新しい『目標』に向かい、
達成への『計画』を立て、『実行』しながら『具体的経験』を重ねていきます。

その中で、内省をしたり、教訓を得たり、マイセオリーを熟成したりしながら
『学び』を重ね、より広く深い視野をもち、『新しい対応』、『より高度な行動』が
できるようになって『成長』していくのです。


『G-PDCA』をしっかり回し続けている組織には、
そこかしこで『成長スパイラル』が渦巻いています。

昨日より今日。先月より今月。

『G-PDCA』を回し続けることで、『成長スパイラル』を創りだすことが
『OJT』、『Off-JT』の効果的な推進に繋がっていきます。  2010.9.24

『働く意味』『仕事とは何か』の共有 |columNo.07

『あなたは何のために働くの? 働くってどういうことだと想う?』

前回の話を受け、ちょっとだけ寄り道になりますが、
いわゆる『健全な仕事感や共通の価値観』を育むという一例として、
弊社の新人研修でも共有している話をご紹介しておきます。


『皆さんにとって働くってどんなことですか?』
『何のために働くんですか?』


弊社の新入社員研修では、スキルや知識の研修の前に、そんな問いかけをし、
新入社員同士でディスカッションをする時間をとっています。


「お金を稼ぐため」
「働かないと生活できないし…」
「学校を出たら皆働いているし…」
毎回いろいろな意見が出されるなか、私は、こんな話を付け加えます。


『考えるヒントとして、今、皆さんが着ているその服を例にとってみましょう』

新入社員たちは、ほとんどのメンバーが上質なウールのスーツを着ています。


その服を皆さんが着るまでに…

どこかで羊を飼う人がいて…
羊の毛を刈る人がいて…刈った毛を、洗う人がいて
…それを紡いで布にする人がいて…その布を染色する人がいて…

別にその洋服をデザインする人がいて…
布をそのデザインどおりに型を取る人がいて…
その型どおりに布を裁断する人がいて…

別にボタンやファスナーを作る人もいて…
裁断された布を洋服に縫いあげていく人がいて…

できた服を販売店へ運ぶ人がいて…
そしてようやく、お店で、それを売る人がいて…


なんだか今着ている服ひとつ取ってみても、
それはそれは沢山の人たちが「はたらく」ことで、
今、自分がその服を着ることができているということに気がつきませんか。


他にもいろいろ挙げられます。
今、皆さんが履いているその靴。今、皆さんが使っているその鞄。
皆さんが、昨日の夜食べた食事。今日の朝飲んだコーヒー。
今、住んでいる家。昨日の夜、部屋を照らしてくれた灯。

いろんなことに想いをめぐらせ、同じように考えると、
自分のために、それはそれは沢山の人たちが「はたらいている」ことに気づきます。


本当に、まわりの沢山の人が、自分のために「はたらく」なかで、
皆さんは自分だけ何もしないでいられますか?
自分もなにか返したいと、むずむずしてきませんか?

…ここまでくると、多くの新入社員たちも、はっと気づきます。


そうして、
『「はたらく」の語源、本当の意味ってどういうことだと思いますか?』
という問いかけをし、またディスカッションを続けます。


「人が動くと書いて『働く』と読みます」という意見も必ず出てきますが、
前述の話もあり、多くは

『「はたらく」 = 「はた」を「らく」にする = まわりの人たちを楽にすること 』 

に、自分たちで行き着いていきます。


「はたらく」という言葉は、
縄文時代か、弥生時代に生まれたという説があります。

あの時代、人々は50人から100人位の村を作り、
ある人はお米を作り、ある人は家を建てるために木を切り、
ある人は獣を狩りに行き、ある人は木の実を取りにいき、
ある人は土をこねて土器を作る…

村のひとりひとりがしっかりと役割を持ち「はたらく」ことで、
みんなで支えあい、みんなが不自由なく暮らしていました。


お米を作ることは稲作と呼ぼう。
獣を捕りにいくことは狩りと呼ぼう。

それぞれの動きに対して「言葉」がつけられていきますが、
どうも、それらを全部ひっくるめた共通の感覚にいきあたったと言います。
それら全部を「言葉」にしたい…。

ここからが、日本人の仕事感、価値観への夢とロマンを感じるところです。

当時の日本人の祖先は、そこに、単純に「人が動く」という感覚ではなく、
「まわり人たちを楽にする」という感覚を見たのです。

人はひとりで生きているのではない。
周りの人たちから恩恵を受け、だからこそ自分もなにか
周りの人たちに貢献をしながら、互いに支えあい、そうやって成り立っている。


そうして、「はた」を「らく」にする…
「はたらく」…という「言葉」は生まれた…と。


私は、縄文時代には暮らしていませんでしたので、本当かどうかは解りません。
が、良い話だなぁと思い、毎回新入社員研修でも話し、弊社みんなで共有しています。

そこは「僕ははたらきたくない」という人もいなければ、
「お金を稼ぐためです」という人もいない世界です。
それは、人として生まれ出て、人間社会の中での必然。
現代の私たちのDNAにも、しっかり刻み込まれているんですよ…と。

「はたらく」ということをポジティブに捉えている弊社では、
そんな風に『仕事感』『価値観』を共有するところから始め、
前出の図の中での育成の基礎・ベースである『心構えや姿勢』
「スキル」や「知識」を繋げる『考え方』の部分を大切にしています。  

2010.09.09 

「OJT」と「Off-JT」<3>   |columNo.06

『OJT』と『Off-JT』の項の最後に、もう一つだけ付け加えておきたいことがあります。

それは、前々回でご案内した図の「直接指導育成できる部分」である、
『知識』『スキル』『考え方』『マインド』の4つは、バランスよく育成するということです。

前回登場の自動車学校ではないですが、自動車は、4輪が『同じ大きさ』の時、
一番スムーズに走れる…のと似ています。

4輪が不揃いでも、最初の低速の時(≒成長初期)はなんとか走れはします。
けれど、スピードが上がり高速になるほど(≒成長が進むほど)
走行はギクシャクして、無理が出て、どんどん危険な状態になってしまうでしょう。

『知識』だけでも頭でっかちになってしまってだめ。
『スキル』だけでも『知識』の裏打ちがないのでだめ。
そして、ここに、健全な『考え方』や『仕事に向かう姿勢』や『心構え』がなければ、
いくら『知識』と『スキル』があっても、もっとだめなのです。

自動車学校でも、知識やスキルと一緒に、『命の大切さ』や『自動車を運転する心構え』、
それゆえに『安全運転』が如何に大切なのか?
…だから交通標識というものがあって、…というルールがあって、
…免許には点数があって…と、教え込みます。


テクニックだけで、心が籠もっていないウエイター…
知識はあるのに、お客様の想いを考えられない販売員…
逆に、想いはあるのだけれど、知識やスキルが足りない営業マン…

前々回でご紹介した図がそうであるように、育成の基礎、ベースは『心構えや姿勢』です。
そして、「知識」や「スキル」は『考え方』が間に入って繋ぐことで、
初めて『望ましい行動』として実行されてゆきます。


その「動作」は、「どんな想いのもと」「何を実現するために」そういう動作をするのか。
その「想い」は、なぜ大切にしたいのか。

あなたがお客様だったらどう感じる?
あなたがお客様だったら、どっちが嬉しい?
企業として私たちが大切にしている想いは?
その仕事を通して本当に実現したいことは?

果ては、『あなたは何のために働くの?働くってどういうことだと想う?』

『知識』や『スキル』と一緒に、それらを繋ぐ『考え方』、
そしてベースとなる『姿勢・心構え』をバランスよく高めてゆくことが、
『OJT』と『Off-JT』の項で最後に伝えておきたいコツです。  2010.08.25

「OJT」と「Off-JT」<2>      |columNo.05

『育成プログラム』の体系化??? … という企業さまに、
『みなさまも良くご存知で、きっとご経験のある、大変優れた育成プログラム』 と
私がよく例に上げ、イメージ共有の雛形にさせていただいているのが、
自動車学校のカリキュラムです。

自動車を運転したことがなく、自動車を運転できない(=育成前の状態)
教習生さんを、ほぼ100%に近い確率で、
自動車を運転できるようにしてしまう(=成長させてしまう)
まさに『できないことを、ほぼ100%できるようにしていく』お手本のようなプログラムです。

■前述の『知識』と『スキル』と同様、『学科』と『技能』に分かれている点。

■『知識』は『勉強』、『スキル』は『練習・訓練』という習得原則に基づいている点。

■特に『技能』については、OJT同様、実際の自動車の運転をしながら習得する点。

■その時、一緒に教育担当者(=教官)がいて指導・育成し、
 大きく逸脱しそうな失敗は、未然に修正し、大きな事故は防いでいる点。

■「ロールプレイング」「ケーススタディ」等、企業での教育訓練にも
 用いられる手法も使われている点。

■それぞれ、第一段階、第二段階…等、ステップごとのゴール(目標)と、
 その順序が細分化、体系化されている点。

■そして、その体系は、その順序で習得すれば、
 誰でも無理がないように組まれている点。

■ひとつのステップを習得する度に、習得の証として押される教習指導官の印。
 これで、今どれくらい習得が進み、あとどれくらいでその段階が終了するのか、
 習得プロセスを一目瞭然にし、上手なプロセス管理となっている点。

■そして、実際に教習学校に行く度に、『ああ、自分はどんどん自動車の運転が
 できるようになっていくなぁ!!』と実感できるような体系になっていて、
 モチベーションも途切れないように創られている点。

更に、前述の『連動性』『計画性』『継続性』という重要な要素も、
しっかり兼ね備えていて、企業の育成プログラムの体系化を
イメージする雛形としても、実は、参考にしたい点が沢山あるのです。


もし、まだ育成プログラムを体系化されていない企業さまは、

この仕事の「学科」と「技能」に当たるものはなんだろう…

この仕事の「第一段階」、「第二段階」に当たるものはなんだろう…

この職種の「仮免許」に当たるものはなんだろう…

この育成体系の「教官の印」(≒プロセス管理)に当たるものはなんだろう…

そんなところから、抽出し、整理してみてはいかがでしょうか。 2010.08.06

「OJT」と「Off-JT」<1>        |columNo.04


では、『育成方針』を明確にしただけで、メンバーがどんどん育ってくれるかというと、
なかなかそうもいきません。

人材育成を考える時、まず現場で必ず出てくる手法が
『OJT(オージェーティー)』『Off-JT(オフジェーティー)』です。

『OJT』は、『On the Job Training』の略で、『実際の仕事の中で育成』を促す方法。
『Off-JT』は、『Off-the Job Training』の略で、
『実際の仕事を離れ、集合研修やセミナーの形を取って育成』を促す方法。

企業における人材育成手法としては、
ここに『自己啓発』(自分で自発的に学習・訓練をする)を入れて
人材育成の三大柱と言ったりもします。

通常、多くの企業さまでは『新入社員』が入社をすると、
まず実際の仕事に就かせる前に「集合教育」の形をとり、
『Off-JT』を一定期間行うことが多いでしょう。

一般に『Off-JT』には、
@キャリアや階層別  A職務や職能別  B課題別 …等の種類がありますが、
入社後最初の「@階層別」の『Off-JT』というわけです。

ikuseizu.jpg
 
ここで、上の図でいう、「マインド」(心構え・仕事への姿勢)や「知識」、
「考え方」…等を教え、基本動作等の「スキル」を練習、訓練していきます。

そして、実際の部署へ配属となり『OJT』へ。

実際の仕事の現場で、『育成担当者』や『上司・先輩』の指導のもと、
成功体験や失敗体験を繰り返しながら、『Off-JT』で得た「知識」を深めさせ、
「考え方」や「マインド」を更に磨き、「スキル」を更に高めていくのです。

ここでとても重要なことは、
『Off-JT』と『OJT』の『連動性』 『計画性』 『継続性』です。
前述の『育成方針』のもと、しっかりとした意図と意志を持って、
『Off-JT』と『OJT』を連動させ組み合わせながら、計画的、継続的に行っていく…。

「あそこは人材育成が上手いよね」と言われる企業さまには、
上記を具体化した独自の『育成プログラム』が、
緻密に体系化されていることが多いものです。

皆さんの組織では、『育成プログラム』を体系化していますか?     2010.07.23

サッカー選手に野球の練習をさせていませんか?<2>  |columNo.03

それでは『育成方針』ってどうやって明確にするの?…というご相談も多く戴きます。

またまたワールドカップで盛り上がっているサッカーの例で恐縮ですが、
今回の岡田ジャパンの戦略は『組織力』とか『選手間の連携』とか『セットプレー』という
キーワードが飛び交っています。ひとりの選手の個人技に頼るのではなく、
チームとして繋ぎながらセットプレーで点を取るという戦略です。

この戦略の組織で、ひとりひとりに求められるのは、正確なショートパスや、正確な連携力。
新聞等でも、ひたすら連携プレーとセットプレーを練習している…と伝えています。
よって岡田ジャパンでは、ショートパスやスルーパス、セットプレーの上手くなった選手を
『成長』と見なし、評価して、積極的に起用します。

一方、個人技やドリブル力で突破し、強烈なシュートで点を取る戦略のブラジルや
アルゼンチンでは、そうはいきません。
選手間の連携よりも、徹底的に磨きぬいた個人技が成長と評価の証です。

サッカーも組織運営も、ある意味、ここは同じなのです。要は
『育成方針は、企業方針や組織戦略の延長線上にある』ということです。
組織が異なれば、同じことを身に着けても評価が分かれることもあるわけです。

例えば、『価値優位』を企業戦略の中心にしているあるメーカーさまは、
「新しいことに挑戦すること」「創造的なこと」を育成方針の一環においていますが、
逆に『価格優位』『量で勝つ』ことを企業戦略の中心にしているメーカーさまは、
「行動量がこなせること」「定型業務の習得」を育成方針の一環においています。

かたや「質の向上」や「0から1を創りだすこと」を求め、
かたや「量の確保」や「引いてあるレールをしっかり走ること」を求める。
求めるものが『質』と『量』ですから、育成の方向性は全く違ってきます。

これらは、一般的に、下図のような流れで策定していきます。

組織活性と人材育成のコラムNo3図


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『企業理念』『全社方針』から始まって、『内的要因』『外的要因』の分析を経た
『組織方針』。そこから導き出される個々のメンバーに『果たして欲しい役割』
『生み出して欲しい成果』 、個々の『成長設計』

そして、それを更に掘り下げると、そのために『必要な「知識」』
『身に着ける「スキル」』 『望ましい「具体的行動」』が明確になってきます。

自社は『○○という強みをもち、◇◇を戦略とする』。
だから、『□□をもって成長とする』。
この一連の流れを、まず、徹底的に共有することが大切なのです。

自社は何をもってお客様に選ばれてようとしているのか?
自組織は何をもって売上をあげ利益を生み出すのか。

『育成方針』は、ここを掘り下げた先で、明確になっていきます。

2010.06.26 

サッカー選手に野球の練習をさせていませんか?<1>  |columNo.02

サッカーのワールドカップで、一躍注目の本田圭佑選手。
デンマーク戦で無回転シュートが決まった瞬間は、深夜にもかかわらず、
思わず私も歓声をあげてしまいました。

例えばですが…この本田選手が一生懸命、『野球』の練習をしていたとします。
バッティングや守備が上手くなり、ホームランを量産できる力がついた…として、
果たして岡田監督は、『うん、本田は成長したなぁ』と認めるでしょうか?

笑いごとではありません。
悪気はないのですが、知らず知らず、そんなことをしている企業さまは意外に多いのです。

たくさんの企業さまのお手伝いをする中で、『人材育成』の問題を考える時、例えば、
本田選手に一生懸命野球の練習をさせておいて、『何であいつは成長しないんだろう?』
…という現象に陥っているような企業さまに、多々出会ってきました。

自社で発揮すべき『成果』…そのために必要な『知識』や『スキル』、『大切にする考え方』、
こういったことを明確にしないまま、『成長』を求めている状態です。


個々人がそれぞれの考え方で当て外れの努力をしていますから、努力は空回りして、
組織や企業への貢献になかなか結びつきません。
そうして、『あいつは、なかなか成長しないなぁ…』と、周りも当人も当惑してしまう。

でも、当人が全く努力していないケースは、ほとんどありません。
多くの場合、当人は当人なりに一生懸命努力しているのです。
けれど、『努力が空回り』してしまっている…とても、もったいない状態です。

これらの『努力を空回りさせてしまう』ことの原因は、自社や自組織が、
サッカー選手として育てるのか、野球選手として育てるのか…
『育成方針が明確化されていない』ことによる齟齬がほとんどです。

自社はサッカーをやるのか、野球をやるのか…
これにあたることを、まず明確にし、それぞれのメンバーとしっかり共有する。
この当たり前のことがちゃんとできているか、自社を見渡してみてください。

サッカーをやることを明確に示したなら、選手は自然に「バッティング」や「守備」の
練習ではなく、「パス」や「ドリブル」や「シュート」の練習をはじめます。

自社や自組織としての『育成方針を明確にし、全員と徹底的に共有する』
人材育成の最初の入り口は、まずここを抜きしては始まりません。

2010.06.23

プロローグ      |columNo.01

こんにちは。藤井です。

このコーナーでは、「人材育成」や「組織活性」、それを推進するための「マネジメントのコツ」
「人事制度」等について、皆さんからの質問にお答えする形で、
お役に立てる情報をどんどんご提供していきます。
皆さまからのご質問もどしどしお受けしていますので、宜しくお願いいたします。

さて最初は、たくさんのお客様からもご要望があった「人材育成」についてです。

  Q.

 経営の三要素「ヒト」「モノ」「カネ」とある中で、「ヒト」が「モノ」と「カネ」を扱う…。

  そういう意味で、企業経営にとって『人材育成』がとても重要なテーマであることは

  良く解っているのですが、なかなか上手くいきません。

  何から、どう手をつけていけば良いのでしょうか?


A.

人材育成は、チーム作りの入り口である『採用』、そして、『人事制度』『評価』
『組織風土』『組織文化』等との関係性もありますが、ここでは『現場での育成視点』
中心とさせていただきます。

以下、大きく5つの側面に分け、次回から何回かに分けてご案内していきます。お楽しみに。

1.育成方針は明確ですか?
  〜まるで「サッカー選手」に「野球」の練習をさせている組織にしないために…


2. 人材育成のために強化したいこと<1> 『OJT力』と『Off-JT力』

3. 人材育成のために強化したいこと<2> 『G-PDCA』の回っている組織づくり

4. 人材育成のために強化したいこと<3> 『誰が育てる?』『どう育てる?』

5. 大変革・大変化の時代 … 『自走進化型人材』というキーワード
  〜「0から1を創れる人材、1を○倍化できる人材」 
                       VS  「レールを引けば走れる人材」

語り手プロフィール

icon-ph-sora.jpg藤井謙治
ふじいけんじ

組織活性・人材育成コンサルタント

 


 

1987年〜 (株)リクルートフロムエーにて、延べ千数百社の企業を担当しながら、
各社の人材採用、育成、組織活性に関わる。当時まだ浸透していなかったアルバイト・パート活用、人事制度評価制度、キャリアパスプラン作りの造形を深める。
1995年〜 フロム・エー東海版の創刊に営業責任者として参画
商品企画の立案・戦略策定・実行管理等と合わせ、新組織の組織設計・人材採用・育成と営業組織の立上げを手がける。
2000年〜 (株)アドバ取締役経営企画室長 兼 営業本部長に就任
東海エリアのみの展開だった(株)アドバの全国展開を開始。全国に数百社あるリクルートの代理店の中で、わずか2社だけとなる東名阪展開の組織へ育てあげる。
2006年〜 (株)アドバ常務取締役に就任。
お客様の人事制度設計や、組織活性・人材育成に関する講演活動に携わり、現在に至る。
出身 青森県生まれ。4歳で静岡県三島市に移り、以来、朝な夕なに富士山を眺めながら健やかに育つ。
趣味 ギター・バイク(愛車はカワサキ)