前回、育成担当者には事前レクチャーが必要とのご紹介で、「5つの基本育成機能」となる「モチベーター」「コーディネーター」「ロールモデル」「ティーチング」「コーチング」に触れさせて戴きました。
これらについては、とても奥深いものがありますので、これから数回に分け、 ちょっとだけ掘り下げて、それぞれご案内を加えておきます。
1.)モチベーター機能
モチベーション…という言葉から思い出すのは、リクルート時代、私が初めて部下をもった時の上司の言葉です。『今までは「自らハートを燃やしている」だけで良かったが、これからは「周りのハートに火をつける」機能も、更に積極的に活用して欲しい』…と。
その上司は、熱い口調で、遠い目をしながら更に続けてこんな話をしてくれました。
『ビジネスマンには3種類の人たちがいる。「周りから火をつけられたら燃える人」、「自らハートを燃やしている人」、「自らハートを燃やし周りのハートにも火をつけてまわる人」。』
『「周りから火をつけられたら燃える人」も、「周りのハートに火をつけてまわる人」と一緒なら、「自らハートを燃やす人」になれる。だから組織は1+1>2という構造になるんだ。』
当時やんちゃで天邪鬼だった私は、「火をつけられてもすぐ消える人」「つけてもつけても火がつかない人」「燃えている火を消して回る人」もいますよね…と言い返して、ひどく怒られてしまいましたが、モチベーター機能は正しく『周りのハートに火をつけてまわる』機能です。
『人は動機によって、自ら行動を起こす』と言いますが、それが外発的なものであれ、内発的なものや自律性に基づくものであれ、高い動機付けのもと自ら本気で全身全霊を込めた行動の方が、より高い成果につながり易くなります。
そうして、さまざまな『ハートに火がつく』場面を見ていくと、大きく分けて3つの外せないポイントにいきあたります。ずいぶん昔にヒットした流行歌の節に乗せると覚え易いのですが、すなわち『現在』『人』『未来』〜♪…というポイントです。
『現在』は、「人は今・現在、夢中になり充実していることならがんばれる」という側面からのアプローチです。このためには、「貢献感・必要感」「成長実感・創造性発揮感」「当事者感・主役感」と言われる感覚を大切にする「かかわり方」が、良い結果に繋がります。
・「貢献感・必要感」…
自分は、この会社でしっかり役割を持ち、それを果たしている…
貢献している…必要な存在だ…と感じさせる「かかわり方」。
・「成長実感・創造性発揮感」…
ひとつひとつ知識やスキルを身につけ着実に成長している若しくは、
自分ならではの創造性が発揮されている、と感じさせる「かかわり方」。
・「当事者感・主役感」…
そして、時には自分で決めさせ当事者としてやりきらせたり、何かの中心的役割を
与えてやりきらせる「かかわり方」。
『人』は、「何をやるのかよりも、誰とやるかの方が動機が継続しやすい」という側面や、「人は誰々とこう一緒にやっているならがんばれる」という側面からのアプローチです。「この人と一緒なら…」とか「この人のためなら…」という感覚と、組織として「この人たちとなら…」「このチームのために…」という感覚。 このためには、日々の「コミュニケーション」、組織としての一体感や結束感を高める「チームワーク」、そして、“育成担当者”自身の「リーダーシップ」…が、ポイントになってきます。
『未来』は、「人はわくわくする未来に繋がるならがんばれる」という側面からのアプローチです。
このためには、「結果期待感」「手段保有感」「行動可能感」と言われる感覚を大切にする「かかわり方」が、良い結果に繋がります。
●「結果期待感」…
なるほどそれなら達成できそうだ…と感じさせる「かかわり方」。
●「手段保有感」…
なるほどこれこれこうしてやればできるな…と感じさせる「かかわり方」。
●「行動可能感」…
なるほどそういう行動ならできるぞ…と感じさせる「かかわり方」。
そして、これらの「かかわり方」は、実際の場面では、ひとり一人の育成段階に合わせた、様々な機会での「理解する」「共感する」「認める」「伝える」「教える」「指示する」「要望する」「確認する」「約束する」「見守る」「褒める」「叱る」「気づかせる」「すり合わせる」「共感を得る」「任せる」「自分で決めさせる」…等のやり取りや、これらの組み合わせとなるはずです。
“がんばれば未来は明るい”が当然で、あたりまえだった時代から、がんばっても、未来がなかなか見えにくい時代へ…という時代背景の変遷の中、モチベーター機能は、人材育成にとっても、急速に重要な機能になってきました。
みなさんの組織では、周りのハートに火をつける人…どのくらいいらっしゃいますか?2010.11.25