次に、「コーディネーター機能」です。
2.) コーディネーター機能
コーディネーターと聞いて思い浮かべるのは、ツアーコーディネーター、ファッションコーディネーター、インテリアコーディネーター、フードコーディネーター、カラーコーディネーター…等でしょうか。
例えば、一人っきりで、まったく知らない地域に、初めて行く海外旅行。
なんだか不安で、どこで何をどうしたら…と、心細くなってしまいそうです。
でも、そこに「ツアーコーディネーター」さんがついていれば、どうでしょう。
なんだか急に、とても頼もしく、楽しく充実した素敵な旅行になるイメージが湧いてきます。
「ファッションコーディネーター」さんも一緒ですし、「インテリアコーディネーター」さん、
「フードコーディネーター」さんも同様です。
それぞれの分野での知識と経験に裏付けられた動きで、いろいろ先回りして準備し
調整しておいてくれることで、それぞれ最も理想的なものに近づいていきます。
コーディネートという言葉を辞書で引くと、
「調和するように組み合わせたり、調整したりし、全体を整えること」、
「運営、進行がスムーズにいくように調整し、整えること」と出ています。
この機能は、育成場面でも、とても大切な機能なのです。
またまた私のリクルート時代の話で恐縮ですが、「コーディネーター機能」と聞いて
思い出す、いまだに感謝している新人時代の経験があります。
入社して数ヶ月経った頃、当時の上司から「お客様向けのコミュニケーションブックの
プロジェクトがあるんだけど、藤井やってみない?」と声を掛けられました。
今度新しく、お客様向けのサービス向上ツールとして、1万部以上の冊子を
配布することになった。その編集委員にならないかというのです。
当時6つあった営業部から各2〜3名づつの選出。
もちろん、主業務である企画営業の仕事も全うした上での業務。
どうやら入社1年未満の選出は私だけです。
後で知ったのですが、当時の上司は、入社数ヶ月でそこそこ仕事を覚え、
卒なく仕事をこなすようになっていく私に、ちょっと早いけれど、更なる仕事の奥深さを
体験させたい…という狙いがあったようです。それに、藤井はテーマに沿って文章を書くの
好きでしょ…と、完全に特性を見抜いた上での選出。
お陰さまで、私は、それまで一緒に仕事をする機会のなかった、各営業部選りすぐりの
沢山の先輩社員の中で揉まれるという経験もでき、媒体の企画営業をするだけでなく
人事制度や組織活性について情報を発信する機会も頂き、
早いタイミングで仕事の時間的、空間的な感覚を広げられることになりました。
例えば、こういった上司の動きは、育成の側面から見ると、
まさしくコーディネーター機能のひとつです。
この段階は習得したから、そろそろ次のテーマ…とか、
○○が得意だから、この役割で…とか、
相互の化学反応を狙って、あの部署の彼と一緒に仕事をさせたら…とか、
人材育成を進める立場として、成長段階に合わせたり、
得意・不得意や傾向・タイプを見抜いて、与える「課題」や「業務」や「役割」や
「組み合わせ」や「タイミング」を『コーディネート』する。
組織には、いろいろな特性、タイプの人材がいます。
なんでも単独でやろうとするタイプと、とにかく周りを頼ってしまうタイプ
目的と意義を納得しないと動かないタイプと、目的も背景も考えず、すぐ走り出すタイプ
目標があると燃えるタイプと、目標にプレッシャーを感じるタイプ
仕事を覚えるのが早いが、仕事をなめてしまうタイプと、仕事を重く捉え慎重なタイプ
あえて極端に並べてみましたが、人材の特性やタイプによって、
与える「課題」や「業務」や「役割」や「組み合わせ」や「タイミング」を調整していくわけです。
例えば…
「何でも単独でやろうとするタイプ」には、あえて「チームでする業務」をコーディネート。
「周りを頼りがちなタイプ」には、「独りで完結させる性質の課題」をコーディネート。
「考え考えのタイプ」には、「とにかく動くことが優先される役割」をコーディネート。
「まず走り出すタイプ」には、「計画だてて進めることが必要な業務」をコーディネート。
…といった具合です。
昔、ファッションコーディネーターの友人と飲み交わした時、こんな話をしてくれました。
『コーディネートって突き詰めていくと、お客様が一番光輝くように、 足りないものを足して、いらないものは削るってこと。』
「必要なものと不必要なもの、多すぎる少なすぎるの違いが解る力」、
「それをお客様が心地よく、満足するよう先回りして準備し、気持ちよく整えられる力」 …
この「三つの力」が大切』だと…。
この話で、『「お客様」を、「自社の人材」や「自分の部下」に置き換え』てみる時、
それは、育成のコーディネーター機能についても、沢山の示唆に溢れていることに気づきます。
みなさんの組織では、育成をコーディネートする人…どのくらいいらっしゃいますか?2010.12.08