続いて、「ロールモデル機能」です。
3.) ロールモデル機能
前述した育成担当者のレクチャーで、ロールモデルのセッションの時、
私は、こんな話をすることがあります。
『育成するメンバーは、皆さんの“言う通り”には、なかなか、なりませんが、 皆さんが “しているとおり” には、間違いなく、なっていくものです!!』
このとき、毎回、多くの参加者たちの顔が“みるみる引き締まっていく”のを、肌で感じます。
自分自身が、「模範」となり、「見本」を示し、「お手本」でなければならない…
更には、新人の目標になることまで求められるのですから、
“武者震い”する参加者が出るのも頷けます。
前回、前々回の「モチベーター機能」や「コーディネーター機能」も、
とても大切な機能ですが、実際の仕事の手順や、具体的な仕事の細かいやり方、
そして仕事に向かう姿勢や情熱などは、育成担当者自身が日常の中で
『お手本』『見本』を示さなければ、なかなか伝えられません。
『やってみせ、言ってきかせて、させてみて、褒めてやらねば、人は動かじ』という、
山本五十六さんの有名な言葉にもあるように、
まず最初は『やってみせ…』が不可欠というわけです。
このように、ロールモデル機能とは、育成メンバーの「模範」となる機能であり、
具体的な「見本」「お手本」を示す機能のことです。
この機能は、更に発揮されていくと、“○○さんのようになりたい”という
「憧れの存在」になっていったり、“1年後に○○さんのように力をつけるぞ!”という
「目標となる存在」にまで拡大していきます。
高いレベルで活き活きと働く先輩を見て、そこに数年後の自分の「理想の姿」を
見出した経験は、多くの方がお持ちなのではないでしょうか?
『なるほど、そういうふうにやるんだ』に始まり、『○○さんは素敵だな』、
『○○さんのようになりたい』という存在が常に身近にいて、
その人物が企業や組織にとっても「模範」、「見本」、「お手本」的な動きをしていたなら…。
それは相乗作用となり、他のさまざまな人材育成の動きを、何倍もの効果にしてくれます。
更に、ロールモデル機能で注目しておきたいのは、入社まもない新人や育成メンバー達の、
『“満足バー”や“スタンダードレベル”の基準値』を押し上げ、そこへの『可能感』を高める
という嬉しい副作用があり、それは組織として連鎖するということです。
「難しそう」「とてもできない」「無理だ」…という心理的な壁は、
すぐ横で年次の近い先輩がなんなくスラスラとこなす日々の姿に
触れ続けることによって、見事なまでに消えていきます。
「難しそう」は、“なんだか簡単そうにやっている姿”を見せられ
「自分にもできそうだ」に変わり、
「とてもできない」は、“楽しそうに活き活きとやっている姿”を見せられ
「あそこまでできるんだ」「挑戦してみたいな」「あそこまでやりたい」
「あそこまでやろう」に変わっていく…。
先週、男子、女子共に、またまた感動を与えてくれたフィギュアスケート界…
2時間20分の壁をも破り、当時、日本人として初めて世界記録更新もした女子マラソン界…
オリンピック2大会連続で金メダルを獲得した男子平泳ぎを中心とする競泳界…
高校野球で、いつも甲子園に出場するあの高校…
スタンダードレベルの高いチームや組織には、
必ず高いレベルでのロールモデルの連鎖が存在しています。
そして、この連鎖は、ロールモデルとなる人材のレベルが高ければ高いほど、
より高いスタンダードレベルの組織を創りだし、
また更に高いロールモデルを生み出していきます。
まさに、
『さまざまなロールモデルたちが存在し、あちこちで機能を充分に発揮している組織は、 それだけで“成長・進化・発展へのDNA”を、一部手に入れているようなもの』
だとも言えるでしょう。
みなさんの組織では、ロールモデル機能…しっかり発揮され、連鎖していますか? 2010.12.22