“採用広報の全体フロー”。
前回、大きく3つのステップに分けて…とお伝えしましたが、
今回は、2つめのステップへ入る時に押えておきたい4つのポイントです。
2つめのステップは、媒体を選定し、広告を制作し、実際に広報していく段階です。
『誰に』『何を』『どんな表現で』『どう伝え』て、たくさんの『求める人物像』を集めるのか。
この時、視界に入れ、押えておきたいのが、
・採用環境
・ターゲット動向
・競合他社の動き
・メディア特性
の4つになります。
これらのご案内で、私は時折、“孟子”や“孫子”の言葉を
引合いに出すことがあります。まさしく、
“ 天の利、地の利、時の利、人の利 ” を計り、
“ 彼を知り己を知れば… ”で、
募集・採用活動も “ 百戦殆うからず… ” にしましょうという例えです。
採用環境を押えることは、“天の利”“地の利”“時の利”を計ることに繋がります。
ここでの “ 天の利 ” は、社会的要因。
社会情勢の変遷や長期的な採用動向。数年単位の変化です。
これはどの企業や組織にも共通するので、ちょっと具体例も挙げておきましょう。
●有効求人倍率 2005年からの推移は0.95→1.06→1.04→0.88→0.47→0.52→0.65
●非正規雇用比率の推移 1982年16.9%→2002年32.0%→2011年35.3%
●労働基準法、パートタイム労働法、最低賃金法、労働者派遣法等の法律改正の変遷
●「重厚長大」から「軽薄短小」、「画一性」から「多様性」、「もしもし」から「いいね!」、
“セーフティネット“から“自己責任”“自己責任”から“絆”、などの時代の変化
「社会の中の自分」から「自分の中の社会」、
“滅私奉公”から“自分らしく”、“自分らしく”から“自分サイズ”などの若者意識の変化
他、さらに長期的な少子高齢化や労働人口減少の進行を押える場合もあったりします。 広報活動は、社会情勢や時代の変化に合ったものでなければなりません。
だからこそ、まず大きな時代の流れを押えておくわけです。
そして、“ 地の利 ” は、地域的要因やエリア環境、通勤の利便性です。
●地域的な人口構造や産業構造要因 ●近隣の大学、専門学校分布
●人気エリア、不人気エリア
●勤務可能求職者の絶対人口
●競合の激しさ
●乗り継ぎや駅からの距離などの利便性
広報活動は、地域性やエリア環境に合ったものでなければなりません。
よって、地域的要因を押えておくことも大切です。
“ 時の利 ” は、時期的要因です。
天の利よりも、もっと短期的な、月単位、週単位の採用動向です。
これは、これから募集活動を考える方を一例として、下記に整理してみましたが、
●ターゲット層の採用動向の中で、今はどんな時期なのか
●さらに、ボリュームゾーンを利用して、採用活動をより計画的にできないか
等を押えることに繋がります。
せっかく広報活動をするなら、最善の“時”を計りましょう…というわけです。
▼求職者の年間の動き(表をクリックすると別ウィンドウで開きます)
次に、ターゲット動向ですが、これが、ここでの “人の利 ” にあたります。
●設定した『求める人物像』は、どんなことに興味関心があり、どんな理由で仕事を探し、
どんな理由で応募を決定しているのか
●仕事探しにはどんな情報源を活用し、どのくらいの期間を費やしているのか…
●アルバイト経験率はどのくらいで、週何日、何時間くらい働けるのか…
●人気職種はどんな職種で、経験職種はどんな職種が多いのか…
さらには、前述の “ 時の利 ” での図も再活用しながら、活発に動く時期はどうか…
ここまでくるとお気づきかもしれませんが、“採用広報”もマーケティングのひとつ。
ターゲットの動向を押さえ、合ったものにしていくわけです。
さらに、競合他社の動きは、まさに “ 彼を知り己を知れば… ” でしょう。
●採用活動上で競合しているところはどこなのか
●どのくらいの給与、どんな待遇で募集しているのか
●どのくらいの頻度で、どんな媒体に、どれくらいのスペースをかけているのか
●何を訴求し、どんなやり方で募集しているのか…
●それは、自社、自店舗と比較してどうなのか…
採用上でどうしても競合してしまう他社や他店の動きを押えることで、
自社、自店舗のより有効な打ち手や、より差別化となる要因も見えてきます。
そして、最後にメディア特性です。
孫子の言葉で準備をしたら、いよいよどのくらいの力で、どう戦うかを決める。
●『求める人物像』や募集職種とメディアの相性。どのメディアが、どの層に強いか。
●募集地域とメディアの相性。どのメディアが、どの地域で強いか。
●メディア自体が持つ媒体力。もちろんコストパフォーマンスも重要な要素です。
採用広報の上で、強力な味方になる各種メディア。
得意分野、不得意分野を知ることで、最善の布陣を組みましょうというわけです。
“ 天の利、地の利、時の利、人の利 ” を計り、
“ 彼を知り己を知れば… ”で、
募集・採用活動も “ 百戦殆うからず… ” にする。
前回、桜の樹に例えてご案内したように、“ 百戦殆うからず…” の採用広報の為に、
根を更に深く伸ばし、広く張り出させていくのです。 2012.04.26