『今、打ち合わせ中だから、もう少ししたら、また電話くれるかい!!』
前回ご紹介の、老舗和食店の大将。
応募者からの電話に出ると、そう言って、電話を切ってしまいました。
表情や物腰はいつも柔らかく上品なのですが、電話越しにその口調だけを聞くと、
応募者にはかなりぞんざいな印象を与えそうです。
今、電話をしてくれた応募者は、もう一度電話をする気になるでしょうか…。
しかも応募者が、本当に沢山の広告の中から、大将のお店を選んで、
意を決して電話をしてくれたにも関わらず、
お礼を言うでもなく、面接日程を合わせるでもなく、
名前も連絡先も聞いていません。
特にアルバイト募集の場合、
募者は複数の応募先へ打診していることも多く、
応募を受ける側の初期対応によっては、
他の応募先に決定してしまうことも考えられます。
席に戻ってきた大将に、私は言いました。
「大将…。面接率を上げる方法がわかりました…」
皆さん、もうお気づきでしょうか。
この出来事が示唆する、『採用力』の3つめの要素。
それは“採用活動力”です。

上図に整理してみましたが、
採用活動力は、他の2つに比べて最も手をつけやすく、
相対的に予算も時間も少なく、さまざまな工夫で効果が期待できる要素です。
それぞれの解説は次回以降で詳しく掘り下げますが、
身近な例では、今回のエピソードのように
応募者への初期応対の仕方ひとつで、面接率が左右されることもあるわけです。
さて、冒頭の続きに戻りましょう。
その後、すぐに私はオフィスに戻り、逸る気持ちでツールを作成しました。
[1] 『応募者応対のコツ』
[2] 『応募受付シート』
[3] 『ご応募ありがとうございます。ようこそ面接にお越しくださいましたPOP』
※詳細は別の項でまた詳しくご案内いたします
大将にこれらをお渡しし、[3]のPOPを大将と一緒にお店の入口に貼りながら、
応募者をしっかり面接に繋げるポイントを、じっくりとご提案させていただきました。
大将のお店は、これまで、口コミや紹介での応募ばかりだったので、冒頭のような応対でも、また連絡してきてくれたし、しっかり面接できていた。
だからこれまで、面接に繋げるための応募者応対のコツなんて考えたこともなかった。
それを事前にしっかりヒアリングしきれていなかった、
まだまだ新人だった私の至らなさ。
『やっぱり広告って凄いんだね!!』
嬉しそうに仰っていた大将に、私の案内不足で与えてしまった採用機会の損失…
それをひとつひとつ紡ぎ直すように、一日の間に、
何度も何度もお伺いしたのを覚えています。
そして、後日談です。
流石に洞察の深い大将。このご提案の後、応募者の対応役は
大将から、物腰も口調も共に優しい、お店の女将さんになりました。
応募者からの電話には、まず、沢山の募集の中から応募を戴いたお礼。
どんなに忙しい中でも丁寧に応対しながら、『応募受付シート』に
名前、連絡先、希望シフト、面接予約日程、電話での印象などを記入。
たくさんの電話は、たくさんの面接予約へと繋がっていきました。
そのあとは、面接も続々です。
たくさんの面接者の中から、大将の希望通りの人材がめでたく採用されました。
お店に顔を出した折、「まぁ、お茶でも…」と勧められ、
大将と女将さんと、そして“採用された方”との4人で飲んだお茶の味。
それは、今でも忘れられない、奥深い味になりました。 2011.10.13